技能実習生を受け入れる際、住居の確保が必須です。技能実習生から家賃の徴収も可能ですが、家賃の上限に関するルールが存在します。受け入れ企業は事前にルールを知ったうえで受け入れていく必要があります。
本記事では、技能実習生の家賃上限を中心に、計算方法や生活必需品の支援などの情報をまとめました。
技能実習生の家賃の上限額
技能実習生の住居に関しては、家賃の上限額が定められていますが、まずは家賃にもかかわる住居に関するルールを解説します。
衛生上有害な作業場の付近や騒音・振動の著しい場所などを避ける
適当かつ十分な消火設備を設置している
寝室は床の間・押入を除き、1人当たり4.5㎡以上
部屋の面積の7分の1以上の光を集められる窓がある
この他にも部屋に関する基準が存在し、技能実習法関係省令で規定されています。
実習実施機関である企業は、上記の条件をクリアする住居に住まわせなければなりません。
実習生は実習期間を通して最大5年間住む可能性があり、劣悪な環境で住まわせるとさまざまな問題に発展しかねないため、注意が必要です。
人手不足の職種に貴重な人材を雇用して技術を教え込む以上、しっかりとした部屋を用意するのが責務です。
部屋以外の設備に関する基準
部屋に関する設備のほか、部屋以外の設備に関する基準も存在します。こちらもその基準をまとめました。
3密を避ける対応を行う
2階以上の建物では、屋外へ安全に逃げられる階段が2か所以上
食堂などを設置する場合、照明・換気を十分に行うほか、食器などを清潔に保管し、ハエやネズミ等を防ぐための措置をとる
トイレや洗面所、浴場などがない場合、これらの施設を設けた上で、清潔にする
部屋以外の設備に関しても、基本的には技能実習生の安心安全、衛生面に配慮した住居にすることが要件として規定されています。
これらのルールを守らないと監理団体などから、厳しい指摘を受けることになるでしょう。
入居人数と部屋割りの考慮
入居人数に関しては、1部屋で原則2名以下にすることが定められています。そのうえで1人あたりの寝室の面積が4.5㎡以上が必要です。
部屋割りに関しても、就寝時間が異なる2組以上の技能実習生がいる場合、寝室を別にするというルールがあります。
早番・遅番のような形で就労時間が異なる技能実習生がいる場合、部屋割りにおいては、早番は早番、遅番は遅番と分ける必要があるのです。
家賃徴収上限額の計算方法
技能実習の外国人から家賃を徴収する際には上限額があり、計算方法も存在します。
本項目では、「受け入れ企業が保有する物件の場合」と「賃貸物件の場合」それぞれのケースで計算方法を解説します。
受け入れ企業が保有する物件の場合
受け入れ企業が保有している物件・社宅の場合、外国人技能実習機構の規定では、「実際に建設・改装等に要した費用、物件の耐用年数、入居する技能実習生の人数等を勘案して合理的であると説明可能な額」というルールが存在し、適用されます。
上記の規定をまとめたものが以下の計算式です。
宿舎の総工費÷宿舎の耐用年数÷12ヶ月÷実習生の人数
この計算式により、実習生1人あたりの家賃が算出されます。
賃貸物件の場合
賃貸物件の場合、外国人技能実習機構の規定では、「賃料を入居する技能実習生の人数で割った額」が家賃となります。
例えば、賃料が10万円で5人の技能実習生が入居していれば、1人当たり2万円を支払う計算です。
この場合の賃料には管理費や共益費などが含まれる一方、敷金礼金・保証金・仲介手数料などは含まれません。
水道光熱費の負担
住居での水道光熱費は原則として技能実習生が実費まで負担します。
徴収額はその住居で消費された電気・ガス・水道料金などが対象で、合計金額を技能実習生の頭数で割る形で算出され、本人に請求します。
水道光熱費の負担に関しては、事前に話し合いを行って理解してもらう必要があります。給与から天引きをする際には賃金から控除する旨を協定書に記載して面接段階で承諾を得ましょう。
話し合いでは、資料などを提出して、妥当なことであると説明しましょう。また控除できるものには、社会保険料なども含まれています。
作成する書類の言語が日本語だと理解されない可能性があるため、契約書の文言が外国人の母国語であることが望ましいでしょう。
雇用契約を結ぶ段階で用意しておくのがスムーズと言えます。
技能実習生の生活必需品の支援
技能実習生に対しては、生活必需品に関しても支援を行い、スムーズな生活を送れるようにするのがよいでしょう。
支援の内容は以下のとおりです。
Wi-Fi環境の整備
生活用品の準備
職場アクセスの確認
ここでは、生活必需品の支援の中身についてまとめました。
Wi-Fi環境の整備
技能実習生にとってWi-Fiは生活必需品であり、Wi-Fi環境の整備は必須です。母国にいる家族や同じく日本に滞在する仲間との連絡にWi-Fiが欠かせないからです。
Wi-Fiがあれば、端末を活用することで音声通話なども可能になります。
母国に住む家族たちと安心してコミュニケーションがとれる環境整備も企業側の責務です。
生活用品の準備
技能実習制度を利用してやってきた実習生が入国してすぐに生活できるよう、生活用品の準備が必要です。
準備すべき具体的な生活用品は以下のとおりです。
布団などの寝具
エアコンなど
電子ジャーや冷蔵庫など
掃除機など
これらはあくまでも最低限の生活用品であり、より多くの生活用品があれば、快適に過ごせるでしょう。
日本人が一人暮らしを始める際に欠かせないものを揃えるイメージで問題ありません。
常勤としての業務に入る前、入国後講習を受けることが実習の制度に組み込まれており、在留間もない期間でバタバタしています。
スムーズな生活のためにも入念に用意するのが親切です。
職場アクセスの確認
住居から職場・事業所へのアクセスの確認も必要です。
実習生が初めて居住する場所については知識がないのが普通であり、最初は丁寧に指導する必要があります。
仕事の現場へのアクセスがよければ、労働者本人にとっての暮らしやすさにもつながります。
他にも近くにコンビニなどがあるかなどを調べ、適宜伝えていくことも求められます。
技能実習生の家賃に関するよくある質問
技能実習生の家賃に関して、よくある質問をまとめました。
技能実習生の家賃は毎年見直しできる?
技能実習生の家賃は最初に定めた家賃で通すことになるため、途中で上げることはできません。
また、上限額が定まっているため、現状家賃の上限額で設定している場合、見直しができても下げることしかできないでしょう。
一般的に家賃の値上げには入居者の合意、許可が必要であり、拒否されると値上げができないほか、拒否したことを理由に強制退去することもできませんので、家賃の設定は計画的に行う必要があります。
特定技能と技能実習で住居基準に違いはある?
基本的に特定技能と技能実習では住居基準に違いがあります。
特定技能の場合、1人7.5㎡以上の広さを確保することが定められており、技能実習生と比べても広めです。
しかし、技能実習2号から特定技能1号への在留資格の切り替えがあった場合は、技能実習時代のルールが採用されます。
特定技能への切り替え手続きがあるからといって、企業側が大きな部屋を用意する必要・義務はありません。
まとめ
技能実習生の住居にはさまざまなルールがあり、家賃の上限などにも決まりがあります。
企業側は家賃を徴収する際、営利目的での金額の設定は認められていないため、あくまでもルール内で家賃を設定しなければなりません。
せっかく計画を申請して認定を受け、仲間として加入してもらった以上、技術を取得して契約が終了するまではていねいに対応することが重要です。
以上のルールを踏まえ、住居の提供や環境整備を進めましょう。
サークルズ協同組合は、2000年に設立された監理団体です。長年の経験を活かして、受入企業様にも実習生にも安心のサポート体制を提供します。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。