特定技能外国人を受け入れる企業には、就労前に健康診断を行い、外国人の健康状態に問題がないか確認する義務があります。さらに、受け入れ後も定期的な健康診断の実施が求められています。
一方で、「何をすればよいか分からない」「費用や必要な書類を知りたい」といった悩みを抱える企業も少なくないでしょう。
本記事では、特定技能外国人の健康診断を中心に、必要書類や検査項目などを解説します。
特定技能外国人に健康診断を行う理由
特定技能外国人に対して健康診断を行う理由は大きく分けて2つあります。
1つは、「特定技能の在留資格を取得するための条件のひとつ」である点、もう1つは「外国人でなくても健康診断が義務づけられている」点です。
特定技能の在留資格を取得する条件のひとつ
在留資格「特定技能」を取得するには、外国人の健康状態が良好であることが定められています。
「健康状態が良好であること」を証明するために、健康診断の受診が必要となるのです。
在留資格を得て働いてもらう以上、企業側は外国人が良好な健康状態であることを確かめる義務があるのです。
外国人でなくても健康診断が義務づけられている
企業は労働者に対し、医療機関での健康診断を受けさせる義務があります。
この義務は労働安全衛生法第66条に基づいたもので、毎年1回の定期健康診断が求められています。
特定技能外国人も、外国人技能実習生も、労働安全衛生法第66条の対象です。そのため、日本人労働者と同様に、雇用主の義務として健康診断を受けさせる義務があるのです。
特定技能外国人の健康状態を証明する書類
特定技能外国人が良好な健康状態であることを示すには「健康診断個人票」と
「受診者の申告書」の2種類の書類が必要です。
本項目ではそれぞれの書類に関する内容などを解説します。
健康診断個人票
健康診断個人票は、在留資格の申請を行う前に健康診断を行って作成して提出する必要があります。
健康診断個人票に記載する内容は以下のとおりです。
業務歴
既往歴
自覚症状・他覚症状
身長・体重・腹囲
視力・聴力
結核の有無
医師の診断など
医師の診断の項目には「異常なし」や「要精密検査」などを書き込むことになります。
これらを踏まえて、健康状態が良好なのか、活動にあたって問題はないのかどうかを判断することになるのです。
病院などで受診した際に漏れがあると、再提出を余儀なくされるので注意が必要です。
出入国在留管理庁のホームページでは、「特定技能外国人の在留諸申請に関するもの」の参考様式第1-3号の項目に、「健康診断個人票」が記載されています。
受診者の申告書
健康診断個人票と別に必要となるのが「受診者の申告書」です。
出入国在留管理庁の「健康診断個人票」のページに付随する形で受診者の申告書があります。
文面には「私は、通院歴、入院歴、手術歴、投薬歴の全てを医師に申告した上で、医師の診断を受けました。」と書かれており、申請人の署名の項目も存在します。
病気を始め、症状などを事前に医師に伝えたことを示すことで、ウソなく申請したことが示されるのです。
特定技能に関する健康診断の基礎知識
事前に就労する前や毎年1回行う健康診断に関して、「健康診断の項目」・「健康診断を受ける施設」・「健康診断の時期」をそれぞれ理解することが大切です。
健康診断の項目
健康診断で必要とされる検査項目について主なものを以下にまとめました。
業務歴・既往歴
自覚症状・他覚症状
身長・体重・胸囲
視力・聴力
結核など
貧血・肝機能・血中脂質・血糖の各検査
尿検査
心電図検査など
健康診断個人票の様式を満たすような検査項目であることが大切です。
もし記入漏れなどがあれば、最悪の場合、在留資格の申請が却下されてしまう可能性もあります。
また医師の署名も必須となっており、1つも漏れがないかを確認しておきましょう。
健康診断を受ける施設
健康診断を受ける施設は、健康診断個人票の様式を満たすような検査項目で受けられる医療機関です。
必ずしも日本国内である必要はなく、海外の機関で対応することもできます。
しかし、健康診断個人票の様式を満たす必要があり、海外だと大病院などに限られる可能性があります。
また、海外の医療機関で検診した場合は、日本語への翻訳が必須です。
健康診断の時期
健康診断の時期は海外からの入国か、日本に住む外国人が特定技能1号に在留資格を変更するかで変わります。
海外から日本に入国するケースでは、在留資格申請日から遡って3か月前から受けられます。
例えば、10月に在留資格の申請をするのであれば、7月以降に健康診断を受けることになるでしょう。
一方、日本にいる技能実習生が在留資格を特定技能に変更する際には、遡る期間が1年になります。
そのため、申請の半年前に健康診断を受けていた場合にはその情報が使える形です。
特定技能外国人の健康診断の費用と有効期間
次にご紹介するのは、特定技能外国人の健康診断の費用と有効期間です。
健康診断にかかる費用はどれくらいかかり、健康診断の有効期限はいつなのか、気になる方もいるはずです。
健康診断にかかる費用
健康診断にかかる費用はおよそ1万円ほどです。医療機関によって費用は多少変わりますが、おおむね1万円前後となります。
この場合の費用負担は受け入れ企業が行い、外国人の負担はありません。
万が一、立て替えてもらうことがあっても後で負担分を返すことになります。
健康診断の有効期間
健康診断の有効期間は海外からの入国だとおよそ3ヶ月、日本に住む外国人が在留変更をする形であれば1年です。
この期間を守らないと健康診断の内容を認めてもらえないため、余裕のある日程・時間で対応しましょう。
特に今後海外から受け入れていく場合には、あらかじめ診断時期を決めておくと確実です。
特定技能外国人の受け入れ企業が知っておくべき健康診断の注意点
外国人の受け入れ企業が事前に知っておきたい健康診断に関する注意点として、「健康診断個人票は母国語で作成する」ことや「受け入れ後も定期健康診断の実施が必要がある」点が挙げられます。
健康診断個人票は母国語で作成する
在留資格を得るために提出する健康診断個人票は原則母国語で作成します。外国人が自己の健康状態をしっかりと理解しておく必要があるためです。
また、提出の際には日本語訳もセットで出さなければなりません。
母国語で出すことを想定し、出入国在留管理庁には、複数の言語で翻訳された様式が用意されています。
この様式を活用して、項目をすべて埋めてもらう形がいいでしょう。
受け入れ後も定期健康診断の実施が必要がある
雇用して業務を行っている段階でも、定期的に健康診断を行う必要があります。健康診断は企業に課せられた義務であり、違反すると罰則の対象となるからです。
特定技能外国人の有無に関係なく、従業員がいれば必ず実施しなければなりません。
その上で健康診断の結果を労働者に通知することや結果の記録を保管することなども義務です。
特定技能外国人に関するよくある質問
最後に特定技能外国人に関して、よく出てくる質問について詳しく解説します。
特定技能の健康診断は1年以内で受けられますか?
結論から言いますと、1年以内で問題ないのは技能実習生や留学生などが特定技能1号に在留資格を変更する場合です。
上記に該当する外国人であれば、1年以内に健康診断を受けていて、健康診断個人票をすべて埋められる形だった場合、問題はありません。
ただ、今の健康状態に不安があり、手続きを行う前に確認したい場合には前もって受けた上で、医師から説明を受けることもおすすめです。
一般健康診断と特定健康診断の違いは何ですか?
一般健康診断と特定健康診断の違いは、着目する病気の違いです。
一般健康診断はあくまでも現状の健康状態をチェックするものですが、特定健診はメタボリックシンドロームなど生活習慣病に関連した内容となります。
健康診断個人票には、脂質検査や血糖検査などの項目がありますが、これらは生活習慣病に関連したものです。
万が一生活習慣病と判断されると、特定保健指導を受けることになり、医療的な支援や生活面の指導などを受けるという制度です。
特定健診は国民健康保険や各会社の社会保険などに加入した被保険者を対象とし、決まった年齢になると受けることになります。
特定技能の健康診断で再検査の場合はどうなりますか?
特定技能の健康診断において、再検査だった場合には再検査を受けさせなければなりません。
再検査の結果、仕事の従事・服務に問題がないと医師が判断し、記入事項にその旨の記載があれば問題なしと判断されることになります。
再検査があった時点でアウトなのではなく、それでも業務ができるかどうかが問われます。
健康診断個人票に「医師の診断」の欄があるので、そこに就業可能などの文言があれば問題ありません。
まとめ
特定技能外国人を受け入れる場合、そして、受け入れた後も健康診断は必須です。
特に年齢を重ねている外国人の場合、何らかの病気を患っている場合もあるため、事前に検査をして確かめておくことが大切です。
健康で働き続けてもらうためにも、配慮を怠らないようにしましょう。
サークルズ協同組合は、2000年に設立された監理団体です。長年の経験を活かして、受入企業様にも実習生にも安心のサポート体制を提供します。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。