技能実習生の受け入れを検討中の企業は、受け入れのためにどのような条件を満たさなければならないかを知っておく必要があります。条件をクリアしなければ受け入れができないため、入念な準備が欠かせません。
本記事では、技能実習生を受け入れる企業の条件や基準、優良な実習実施者に関する情報をまとめました。
技能実習生を受け入れる企業の条件とは?
技能実習生を受け入れる企業の条件は、以下の6つが挙げられます。
技能実習責任者・生活指導員の配置
技能実習日誌の作成
社会保険・労働保険の加入
生活を送る宿舎の準備
生活のための設備環境
労働基準法や最低賃金法も適用
ここでは、上記の条件に関して詳しく解説します。
技能実習責任者・生活指導員の配置
技能実習生を受け入れる事業所において、技能実習責任者や技能実習指導員、生活指導員の人材配置が必須です。
実習実施機関として、速やかに入国させて技能を修得させなければならないからです。
技能修得のために技能実習指導員や監督する技能実習責任者、実習生に日常生活のケアを行う生活指導員の配置が求められます。
ちなみに技能実習指導員は、実習生に修得させる技術に関して5年以上の職務経歴を有する職員でなければなりません。
また技能実習責任者などは専用の講習があり、講習を受けることで優良な実習実施者としての評価が高まる仕組みになっています。
技能実習日誌の作成
技能実習生に指導を行う際には、技能実習日誌を作成します。監理団体が後から指導内容をチェックできるようにするためです。
また技能習得の状況を管理できるため、習熟度などの確認にもつながります。
技能実習日誌は技能実習が終わってからも1年間は必ず保管しなければならないため、保管場所にも配慮することが求められます。
社会保険・労働保険の加入
技能実習生を受け入れる際には、社会保険や労働保険の加入も欠かせません。技能実習生にも、日本人と同等の権利があるからです。
日本人が企業で働く際には最低賃金以上で雇用され、各種保険に加入します。技能実習生も年金への加入が必須であり、未加入は許されません。
生活を送る宿舎の準備
技能実習生が普段生活する宿舎・宿泊施設の用意も必要です。宿舎に関しては明確な決まりがあり、部屋の広さを始め、すべてクリアしなければなりません。
技能実習生が暮らす部屋は、1人につき、4.5㎡以上、概ね3畳以上の確保が必要です。
他にも早番・遅番のように睡眠時間に違いがあるケースでは、寝室を分けなければならないなどの条件も存在します。
生活のための設備環境
技能実習生が生活する宿舎を始め、設備環境も整えなければなりません。
寝具を始め、生活する上で必要最低限のものを取りそろえることが条件となっています。食堂などがある場合は照明や換気設備の設置、害虫を防ぐ環境整備などが必要です。
事細かに基準を設けることで、技能実習生が劣悪な環境で就労することを防いでいます。
労働基準法や最低賃金法も適用
技能実習生は労働基準法や最低賃金法も適用されます。
日本人労働者と同じ扱いにすることが定められており、日本人労働者に与えられる権利は技能実習生にも当てはまるのです。
この場合の最低賃金には2種類あります。
地域別最低賃金
特定(産業別)最低賃金
そのエリアでの最低賃金、産業ごとで設定された最低賃金の2つがあり、いずれか高い方が適用されます。
万が一、最低賃金を下回る賃金で従事させた場合、受け入れ機関の許可が取り消され、5年間受け入れができなくなるので要注意です。
技能実習生の受け入れ企業が満たすべき基準
技能実習生の受け入れ企業が事前に満たしておくべき基準は3つあります。
実習実施者になるための申請書類
受け入れ可能な業種と人数
監理団体との連携
本項目ではそれぞれ3つの基準について詳しく解説します。
実習実施者になるための申請書類
技能実習計画や技能実習計画認定申請書など、申請書類の準備が必要です。
技能実習計画の認定を受けた後にも、実習実施者の届出を行います。この時に提出する申請書類は「実習実施者届出書」で、外国人技能実習機構に提出します。
届出が認められれば、「実習実施者届出受理書」が交付され、受理書に記載された「実習実施者届出受理番号」が今後の申請で欠かせないものとなります。
受け入れ可能な業種と人数
技能実習生を受け入れられるのは2号以降への移行対象職種である7つの業種91職種167作業に該当する業務です。以下に受け入れ可能な業種をまとめました。
農業
漁業
建設
食品製造
繊維・衣服
機械・金属
その他
例えば、繊維・衣服であれば、紡績運転の「前紡工程作業」、建設では、サッシ施工の「ビル用サッシ施工作業」などが上記に含まれています。
その他、工業製品の製造業など多くの業種が該当します。
受け入れ可能人数は最低3人からで、企業の常勤職員数で変化し、301人以上からは常勤職員総数の20分の1が上限です。
ちなみに、「優良な実習実施者」の認定を受ければ、受け入れ枠はおよそ4倍まで拡大します。
監理団体との連携
技能実習生の受け入れには、監理団体との連携も必須です。
監理団体は技能実習が正しく行われているかをチェックする団体であり、実習実施者の監査や訪問指導、技能実習計画の作成サポートなどを行います。
監理団体には、「特定監理事業」と「一般監理事業」があり、技能実習3号まで受け入れたい場合には「一般監理事業」の監理団体である必要があります。
監理団体が機能しないと許可の取り消しを受ける可能性があるため、事前に評判を確かめることが必要です。
技能実習生を受け入れできない企業
技能実習生の受け入れができない企業も存在します。受け入れができないのは以下のケースに該当した場合です。
関係法律による罰則
技能実習法による処分
申請者の能力や役員等の適格性
暴力団排除の視点
本項目では、それぞれのケース・条件についてまとめました。
関係法律による罰則
過去に技能実習法や社会保険法など関係法律による罰則を受けた場合には、技能実習生の受け入れができません。
技能実習制度を適正に運用することが求められているのが主な理由です。
他にも禁錮刑以上の刑に処され、執行から5年経過していないなどの場合も欠格事由に該当し、技能実習の認定が受けられません。
技能実習法を守れそうにない組織に技能実習をさせないという明確な方針が示されています。
技能実習法による処分
過去に技能実習法違反で処分された場合も、技能実習生の受け入れができなくなります。
理由は技能実習制度を適正に運用することであり、過去に実習認定の取消があると、取消から5年を経過しないと欠格事由に該当します。
法人が実習認定の取消を受けた際、当時の役員だった人物も対象です。また、役員には法人に影響力を持つ間接的な経営者も対象となります。
誰かをダミーとして置いておき、問題が起きれば首をすげ替えていくようなことはできません。
申請者の能力や役員等の適格性
申請者の能力・役員などの適格性が欠格事由に該当すると、受け入れができません。
例えば成年被後見人や破産手続開始決定によって復権していない人物を役員に据えると、技能実習生を受け入れられないのです。
行為能力に乏しい、もしくは行為能力に制限があるなどのケースに当てはまると欠格事由に該当します。
暴力団排除の視点
暴力団員が事業を支配しているようなケースでも欠格事由に該当します。
また、過去に暴力団員だった場合も、暴力団を抜け出してから5年が経過しないと欠格事由に該当します。
知っておくべき「優良な実習実施者」とは
「優良な実習実施者」は2017年に施行された技能実習法で定められた仕組みで、適切に技能実習を行うかどうかを示す基準として政府により制定されました。
受け入れ企業にとっては、「優良な実習実施者」の情報は知っておくべきといえます。優良な実習実施者になることでいくつかのメリットがあるからです。
ここでは、優良な実習実施者に関する情報を解説します。
「優良な実習実施者」の要件
優良な実習実施者になるには、要件を満たす必要があり、各種要件で点数を重ね、150点満点中90点以上になると優良な実習実施者であるとみなされます。
優良な実習実施者になるための要件は以下のとおりです。
技能等の修得等に係る実績(最大70点)
技能実習を行わせる体制(最大10点)
技能実習生の待遇(最大10点)
法令違反・問題の発生状況(最大5点)
相談・支援体制(最大45点)
地域社会との共生(最大10点)
例えば、「技能等の習得等に係る実績」の中の項目に「基礎級程度の技能検定における学科試験・実技試験の合格率」があります。
合格率が75%未満だとマイナス20点ですが、95%以上であればプラス20点となり、実績に応じて点数がつけられます。
中でも直近3年以内で改善命令を受けた場合は、改善を実施してもマイナス30点、未実施だとマイナス50点とかなり重い処分となります。
基本的に、技能実習生に対して適切な対応・処理が行われていれば、要件を満たせるような内容です。
「優良な実習実施者」に認定されるメリット
優良な実習実施者に認定されることで得られるメリットは以下のとおりです。
技能実習期間が最長5年に
技能実習生の受け入れ枠が拡大
優良な実習実施者となることで、在留資格「技能実習3号」までの区分移行ができ、最長5年の技能実習期間となります。
また受け入れ枠は、優良な実習実施者の認定を受け続け、1号・2号と重ねていくと初期と比べて最大6倍まで増やせます。
他にも優良な実習実施者になることで、企業としてのイメージアップにつながりやすいなどのメリットもあります。
まとめ
技能実習生を受け入れる企業が、技能実習制度の意義を正しく理解して活用してもらうためのルールは、厳格に取り決められたものになっています。
いずれの条件・要件も、技能実習制度を適正に運用するために欠かせないものばかりです。
その趣旨に賛同する企業に、相応のメリットを与えるのも必然といえます。これから受け入れを検討する企業は、入念な準備を行い、万全の態勢で技能実習生を受け入れましょう。
サークルズ協同組合は、2000年に設立された監理団体です。長年の経験を活かして、受入企業様にも実習生にも安心のサポート体制を提供します。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。